ハンドメイドへのこだわり

AMORSPHEREの作品にはハンドメイドで生み出された事を示す為にHANDMADEと刻印が入っています。(一部例外を除く)
これはハンドメイドにこだわり作品を作り上げた、一人の職人のプライドの証でありAMORSPHEREそのものです。

ハンドメイドとは

現在、日本には宝飾品のハンドメイド製品についての明確な基準がありません。
AMORSPHERE作品のハンドメイド表示の根拠は、アメリカFTCのガイドラインに準じています。
その基準を要約すると、

原材料であるシルバーの板、棒、ワイヤー等を全ての工程において手の動きを伴って曲げたり削ったりして加工する事。
大量生産の手法であるキャスト、ロストワックス、レーザー、プレス、CNC等の工法を用いてはいけない。

AMORSPHEREでは全てのパーツから手作業で製作しており、大量生産品である市販のパーツは一切使用していません。
製作の過程で電動工具のリューターや研磨でバフモーター等を使用します。
また、硬い金属を加工する為にはハンマー、プライヤー、ヤスリ等様々な工具が必要です。
これらの工具の使用は人の手の動きを伴う為にハンドメイドの基準に合致します。

しかし、キャスト等の工法はセッティングさえすれば機械が自動的に造型するのでハンドメイドとは呼べません。

ハンドメイド

ハンドメイドでの製作には、大変多くの時間と手間がかかります。
この画像は製造過程で出るシルバーの切れ端や失敗作などのゴミです。 (ゴミと言っても、もう一度溶かして再利用しますが)

ハンドメイドで製作するとこのように多くのロスが発生します。
特にハンドメイドの特長を活かせるワイヤーを編むものは、きれいに編めた部分のみを作品に使用するのでロス率が高くなります。

また、製作に失敗したりバランスが悪かったりすると作り直しになり、丸ごと時間も材料も無駄になるので難しい工程ではかなりプレッシャーがかかります。

また、新しいデザインのものを作る時は全体のデザインから小さなパーツのバランスや製作手順などを見直しながら作るので、大量のシルバーと時間を消費します。

全ては最高のものを生み出す為の尊い犠牲です。

こだわりの一例

ハンドメイド

この画像はマーカー裏の文字入れです。Sの文字は実寸では高さが約9.9mm幅が約12.7mmの大きさです。
(レーザー加工を用いればデータ通りのもっと小さな精密な文字を簡単に作れます。職人は必要ありません。)

この文字は非常に細い糸ノコを用いて板から切り出しています。
横からの力が少しでも加わると糸ノコの刃はすぐに折れてしまいます。
こうして拡大してみるとそれほどスムーズではありません。
何度も失敗を繰り返しようやくここまで出来るまでになりましたが、もっと小さな文字でももっときれいに作れるように腕を磨いています。
レーザー加工を用いれば簡単なのにと思われるかも知れませんが、機械に負けないようなクオリティーをこの手でいつか生み出せると信じています。

AMORSPHEREの作品はこうした小さなこだわりの積み重ねで出来ています。
それぞれのパーツにそれぞれのこだわりがあり、より良いものを作りたいとの想いが込められています。
そんな想いのつまったパーツを組み合わせて完成した作品はまさしく心のこもった特別なものです。
手にした瞬間に感じるハンドメイドならではのずしりとした重さの中には魂が宿っているはず。

特別なものを特別な方のもとにお届けするのがAMORSPHEREの存在意義です。

磨くことへのこだわり

ハンドメイド

AMORSPHEREの作品には独特の輝きがあります。

研磨の作業は、作品製作のクライマックスでありまさしくシルバーに命を吹き込むようで非常に楽しい工程です。
ただの金属が研磨によって最も光を反射する金属に変身する様子は感動すら覚えます。

銀は鏡に使用されているように磨き上げられたシルバーは鏡面の輝きを放ちます。
その反面、きちっとした手順で製作しないと美しく輝きません。
様々な道具やテクニックを駆使して研磨出来る状態へ下準備しますが、この下準備が非常に重要です。

特にロウ付けの回数が多い作品は、どうしてもバーナーの炎によってシルバー表面がやけどのようなくすんだ状態になってしまうので、その対策を研磨の前にしておかないと磨いてもまだらな模様が浮かび上がってしまいます。
これはハンドメイドで製作しているが故の問題かも知れません。

AMORSPHEREでは仕上げ(rouge)に黒い研磨剤を使用しています。
仕上げに使用する研磨剤の色が仕上がりに影響するので、黒い研磨剤によってより深みのある落ち着いた輝きが得られます。

シルバーは熱伝導率が高い金属なので、研磨しているとかなりの高温になります。学生の頃はあまりの熱さに何度も手を止めていたのが、いつのまにか指が熱さに慣れたのかあまり気にならなくなりました。

全ての精力を注ぎ込んで生まれたキズ1つ無い鏡面は、少し布が触れるだけでもうっすらとキズになるはかなさにこの世の無情を感じます。

職人紹介

ハンドメイド

メッセージ

シルバーはゴールドに比べて加工や取り扱いが難しいので、非常に奥が深くやり甲斐のある素材です。
シルバー職人を志した時からハンドメイド以外の手法は考えていませんでした。

ゼロから作品を作り上げる事こそがもの作りの最大の喜びであり、自分にとってもの作りをしている事を実感出来る唯一の方法だと感じています。

最新作が最高傑作であるとの信念を持って日々シルバーと向かい合っています。
デジタルな世の中になり、3Dデータさえあればデータ通りの精密な製品が作れる時代です。
そんな中で、一人のアナログな職人の熱い想いが作品を通じて一人でも多くの方に伝われば幸いです。

辻 篤史